いわき市医師会長 齊藤 道也
本年6月からいわき市医師会長を仰せつかりました齊藤道也です。
この度はまた大変お世話になります。
いわき市医師会の令和6年6月1日現在の会員数は468名、その平均年齢62.48歳、内所謂開業医178名、その平均年齢64.68歳、勤務医252名、その平均年齢58.74歳、卒後5年以内医師36名です。これがいわき市医師会の精鋭陣容となります。
さて、日本は、高齢化、人口減が予想を超えるスピードで起きています。 昨今クローズアップされてきた1947~49年生まれの団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となる2025年問題に突入しており、さらに10年後には人口の三分の一が65歳以上という、人類社会が未だかつて経験したことのない超高齢化社会を迎えることになるとされています。
超高齢社会=多死社会が訪れることは、健康寿命を超える人々の中には認知症や心不全、腎不全、フレイル、要介護者が増え、地域の入院ベッドを圧迫する事態となります。必要な入院調整に時間がかかる、無理が生じることが増えてまいります。これが医療界として今後常に直面する一つ目の課題です。
そして医師が診療する上でなくてはならないパートナー、世界のどこへ行ってもその役割は変わらない必要な存在、それは看護師です。しかし18歳人口の減少、若年者の進学志向、就職志向の変化から看護学校への入学者が全国的に減り続けています。
いわき市医師会では医師会立准看護師学校を持っています。いまだに多くの診療所に勤務される看護師の大半は准看護師と思われます。その私たちの学校も10年ほど前までは学年が100人近いことも普通でしたが、今や頑張っていろいろ工夫して募集しても20人が精一杯です。県内各地の准看護師養成所をみても惨憺たる状況は変わらず、これはいわき市に限ったことではありません。この数年中に新規募集停止も含め真剣な議論検討を重ねます。これは二つ目の課題です。
ここに加えて解決すべき大きな問題は、団塊世代の人口現在約800万人が75歳以上になると、現在約1,500万人の後期高齢者人口が約2,200万人に膨れ上がることです。つまり「介護される側」が急増し少ない人口構成群の「介護する側」の大量不足という「介護需要パンデミック」が起きるのです。
圧倒的スピードでのデジタル革命と人手不足が同時進行する今、論争長期化は、介護サービスを利用できない高齢者が大量にあふれ出ることになる「介護需要パンデミック」これが三つ目の課題です。
このいわき市医療圏におけるこれら問題解決の糸口は何か、医師会として取り組んでまいります。
1)直近の医師不足に対しては
他の中核都市に比べはるかに医師不足、医療関連多職種不足と言われるいわき医療圏をどうするのかですが、これは関東圏と人口減少県というステレオタイプの見方ではなく、この地において市街地と周辺地区での医師偏在化対策、例えばオンライン診療もタブー視することなく、行政側とともに考えていく必要があります。また、若い医師が希望を持ってこの地で診療にあたれる環境作りを行政側と共に考えてまいります。
2)医師会としての推進する医療関連重点プロジェクトは何か
医療人材不足に伴う再入院抑制、医療費抑制、健康指標改善を強く意識したものとなります。
① いわき心不全発見プロジェクト
② いわき骨強化プロジェクト
③ いわき睡眠改善プロジェクト
そしてそれに加えて新たな年度からは透析導入を減らすためのC K D対策
④いわきそら豆(腎臓)いきいきプロジェクト
全ての疾病、健康指標の早期発見につながる
⑤ いわき検診を受けようプロジェクト
福島県いわき市が発信元となり今や全国キャンペーンに育ってきた受動喫煙対策『愛する人をタバコの煙から守りたい』をスローガンとした
⑥ イエローグリーンキャンペーン
を加えた計6つを長期に推進してまいりたいと考えます。
地域総力戦で戦う意識を、私たち医師、医療多職種はもちろん政治家や自治体職員、そればかりではなく、これからの未来を担う子供たちを含めた地域の皆様と共有し事にあたりたいと考えます。
皆様には多方面からのご意見を頂戴できますと幸いです。
心よりご協力の程よろしくお願い申し上げます。
令和6年6月15日
いわき市医師会は、明治39年制定の『医師会規則』により明治40年に『石城郡医師会』が設立されました。その後、幾多の変遷を経て昭和46年4月平正内町に『社団法人いわき市医師会』を発足し、昭和59年3月内郷御厩町に移転しましたが、平成23年3月の東日本大震災において大規模半壊の被害を被るなか、平成26年4月に『一般社団法人いわき市医師会』となり、平成28年8月に中央台飯野4丁目に移転しました。
その間、昭和16年に准看護師養成所を開始し、これが『いわき市医師会附属いわき准看護学校』に発展しております。また『いわき市休日夜間急病診療所』が昭和50年1月に開設され医師を派遣するほか、昭和52年度からは在宅当番医制事業を展開し救急医療に寄与しております。更に、学校医活動ほか予防接種、乳幼児検診や健康診査、各種がん検診を展開し、市民の健康保持増進に寄与しています。その他に災害の多発的な発生時の対応や新型コロナウイルスのような未知なるウイルスにも市民の安心安全を確保するために行政並びに会員間の新たな連絡体系の構築をしています。
1.医師会運営
1)役員会、(各種)委員会、各ブロック並びに各臨床部会ほか、多職種等の連携研修を推進し、医師会活動の促進につとめる。
2)医師会館を拠点とした地域医療・教育環境の整備充実を図り、准看護師の養成並びに進学過程の併設に努める。
3)いわき市医療構想会議に参画のうえ、本市の地域医療における諸課題について行政と共有し地域医療の推進と公衆衛生の向上をはかる。
4)いわき市と緊密に連携して、健康医療出前講座等を開催し市民の健康寿命延伸に努めるとともに在宅医療に係わる新規医師と多職種連携の裾野を広げ「在宅医療の充実」を図るほか、「地域包括ケアの構築」を推進し、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活を送ることができるよう高齢者福祉の充実をはかる。
5)医療業務上の問題等の収集と情報の開示に努め、医道の高揚と会員の保護に寄与する。
6)医師不足に対応するため「医師不足対策委員会」を適宜開催し、短期および中長期的視点に立って医師不足対策に努めるほか、新たな医師会員を増やすための活動を行う。また、いわき市と連携して小中学生に対する健康や医療・地域包括ケアの教育に努め、医療・介護の理解を深め、地域における支え合いの体制づくりを促進し、若者の担い手育成に寄与する。
7)医師の働き方の適正化に向けた取り組みに際し、医師の偏在対策に努めるほか多職種連携を促進し、医療の質と安全の確保、ワークラーフバランスの充実に取り組み、将来にわたって持続可能な医療提供体制の維持に努める。
8)災害の多発的な発生並びに新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対応し、市民の安心安全を確保するために行政並びに会員間の新たな連絡体系の構築に努める。
2.生涯教育ならびに学術振興
1)日医の生涯教育制度を推進すると共に、日医認定医(スポーツ医ならびに産業医)の研修につとめ取得促進及び資質の向上をはかる。
2)常磐医学会を主催し、学術の振興につとめる。
3)学術講演会を開催し、各種小グループ勉強会・各臨床部会を支援する。
4)登録医を中心とした病診連携を推進し、医療施設における研修等の充実につとめる。
3.地域内保健衛生、医療の向上普及
1)市民の健康保持増進を図るために、コロナ禍における医療機関の受診等の周知、「いわき市発熱等患者対応医療機関」の充実に努め、医療提供体制の堅持とコロナ陽性者の重症化予防のほか、救急医療・災害時医療体制と「5疾病・5事業および在宅医療」それぞれの医療連携体制の構築につとめる。
ⅱ.被災者や放射能汚染に対する市民の不安解消など心のケア対策につとめる。
ⅲ.地域医療福祉ネットワークシステムの構築を促進し、地域医療提供体制の強化並びに関係機関等の情報共有と連携体制の強化につとめる。
ⅳ.いわき市との災害時の医療救護に関する協定及びいわき市医師会災害医療救護計画を再検討し、災害時医療救護体制の整備につとめる。
ⅴ.福島県医師会災害医療チーム(JMAT福島)への登録強化につとめるほか、災害発生時には日医・県医や被災行政と連携し医療ニーズの把握や情報の共有を図り、被災地への迅速かつ継続的な医療支援につとめる。
ⅵ.医療救護班及び救急隊員の円滑な活動及びドクターヘリの有効な運航のために関係機関との連携、会員等への広報・周知を図る。
ⅶ.高齢者の徘徊や異常死体の検案等、市民生活において、いわき三警察署との相互理解と連携強化が極めて重要なことから、協力体制の構築に向けた取り組みを図る。
ⅷ.福島県医師会が主催する死体検案研修会に会員を派遣するとともに県警察本部との連携強化を図り、会員が死体検案業務を遂行し得る環境の整備につとめる。
ⅸ.Ai(死亡時画像診断)の普及推進につとめる。
ⅹ.新型コロナウイルス感染症の診療体制と介護施設・在宅医療における感染時の連携体制の構築につとめる。
2)医療、保健事業の調査研究に関する市からの受託事業に協力する。
3)高齢者医療確保法に基づく生活習慣病予防を中心とした健診・保健指導ほか、地域支援事業介護予防二次予防事業・健康増進法に基づく各種がん検診、骨粗鬆症検診を推進し精度管理の向上につとめる。
ⅱ.喀痰細胞診の判定並びに肺がん、結核検診と胃がん検診のフィルム読影を行い、がんの早期発見につとめるほか、各検診に関する勉強会を開催し、検診医の診断技術及び検診精度の向上に寄与する。
ⅲ.乳がん検診従事者研修会を開催し、検診医師・読影医師の診断技術の向上をはかり、がんの早期発見につとめ検診精度の向上に寄与する。
ⅳ.健診の心電図及び眼底写真を判読し、異状所見の早期発見につとめる。
ⅴ.がん検診事業の一環として受動喫煙防止活動を展開し、小中学生・市民を対象とした教育活動、医師、コメディカル向け講演を適宜開催し、イエローグリーン活動の浸透・市民の健康保持増進と禁煙外来のスキルアップにつとめる。
4)いわき市が実施する国民健康保険人間ドックに協力し、疾病の早期発見と精度管理の向上につとめ、市民の健康保持増進に寄与する。
5)いわき市と協同して健康医療出前講座を開催し、市民の健康意識の高揚と健康指標の改善に寄与する。また、コメディカル関係者と随時意見の交換を行い、保健事業の充実に資する。
6)特定健診(健康診査)及び健康診査のデータを活用し、罹患率の高い糖尿病性腎症・慢性腎臓病の重症化予防事業を展開し、主治医と腎臓専門医によるアプローチ体制を組織し適正な医療と生活習慣の改善に努め、有病者(予備群)の生活の質の維持及び向上を図る。
7)医師不足の本市において、有病率の高い心不全・骨密度・睡眠時無呼吸・慢性腎臓病の四疾病プロジェクトを展開し、その予備軍に適正な医療・生活改善指導等を実施のうえ市民の健康寿命の延伸に寄与する。
8)医療機関の連携を図り小児救急・周産期医療システム等の諸施策を展開するとともに「傷病者の搬送及び受け入れの実施」に係る適切な運用に努め、地域完結型医療への構築を推進する。
9)いわき市と協働し医療廃棄物の適正な処理の確保につとめる。また、医療資源の有効活用や排出時の安全性等について調査研究し、環境の保全に寄与する。
10)スポーツ協力医組織の充実を図り、スポーツ医学の普及啓発につとめる。
11)地域産業保健センター事業に協力するとともに、産業医部会と連携し労働衛生・産業保健の充実につとめる
12)地域医療連携を推進するにあたり、「かかりつけ医機能」を重視し、医師向け研修ほか住民への啓発活動を展開するとともに、「地域包括ケアの構築」「在宅医療の充実」「認知症対応能力向上」に向けて、次の活動をすすめる。
ⅱ.「在宅医療多職種研修会」を開催して多職種と医師が在宅医療について学び、在宅医療に新たに参加する医師を増やす。
ⅲ.新しく在宅医療を行う医師が休日不在の際にサポート医がバックアップを行うことを中心として結成した「いわき在宅医療ネットワーク」を更に発展させる。
ⅳ.在宅医療を行う際に必要な「一時的な入院に関する連携」のため、在宅医療と病院の連携を推進する。
ⅴ.在宅医療に関する市民への啓発を重視し、市民講座および「在宅医療出前講座」を開催し、いわき市版リビングウィルの「私の想いをつなぐノート」の普及に努める。
ⅵ.認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人やその家族に対して手助けする「認知症サポーター」の養成を推進し「いわき市認知症初期集中支援チーム」並びに「いわき市認知症サポート医連絡会」を支援する等、認知症高齢者等に優しい地域づくりに努める。
ⅶ.いわき市地域包括ケア推進会議および各中地域ケア会議に参加し、地域の見守り活動・認知症カフェ・生活支援サービスをサポートする。
4.小児保健活動
1)予防接種および乳幼児健診の適切かつ円滑な運用を推進し、小児保健の充実をはかる。
2)小児保健の研修を目的とした講習会を開催し、地域における小児医療レベルの向上と小児医療保健供給体制の充実をはかる。
3)小児科休日輪番制の推進や休日夜間急病診療所の運営改善等により、小児初期救急医療体制の充実をはかる。
4)病児・病後児一時預かり事業を行政と連携して推進し、地域の子育て支援の充実をはかる。
5)児童虐待防止のために、行政、関係機関と連携して体制整備を推進する。
6)新生児聴覚スクリーニング事業及び10か月児個別健診事業の実施について、行政と連携して推進する。
5.社会保険診療の適正実施
1)医療保険制度の周知徹底をはかる。
2)保険診療に関する会員からの疑義・苦情の収集に努め、これに積極的に対応する。
3)診療報酬の変更・制度の改定にあたって、会員への伝達指導を行う。
6.学校保健活動
1)専門医による学校検診を推進し学校医の健康診断等を支援するなど、児童生徒の健康
保持増進に努めるとともに各校の学校保健委員会の充実をはかる。
2)市内小中学校検診の心電図及び貧血検査結果を診断し、適切な処置につとめる。
3)教育委員会及び小中高校の校長・保健担当者と共に学校保健運営のための協議会の
活動を強化する。
4)学校保健活動の活性化を目的とした講習会を開催し、学校医の学校保健活動の充実と
向上につとめる。
5)生涯に亘る健康の基礎づくりに果たす学校保健の役割がますます高まっていることか
ら、児童・生徒の健全な育成を目指し、学校医と養護教諭・保健主事が協働し学校
保健活動の実態と当面の諸問題について研究協議を行い地域保健の充実と発展に
つとめる。
7.福利厚生及び親睦
1)会員及び会員家族相互の親睦に寄与する行事などの活動を支援助成する。
2)会員の表彰並びに各種受賞者に記念品を贈ってお祝いする。
3)勤務医と開業医の集いを開催し相互の連携をはかり、地域医療の円滑な運営に寄与する。
4)尚歯会を開催し長老会員との親交をはかるとともに、白寿・米寿・喜寿会員に長寿のお祝いの品を贈呈する。
5)医療におけるインターネットの活用も含め、より良い医療を実施するために自由な議論や情報交換をする場を提供し、会員同士の交流の活性化につとめる。
8.広報活動の活性化
1)情報の伝達と会員の親睦並びに意識の向上に資するため毎月一回会報を発行する。
2)メディア等を活用し事業活動のPRを行い、ホームページに医療機関検索システムを掲載して市民の健康保持増進につとめる。
3)市民公開講座を主催し、市民とともに学び討論する場を作る。また在宅医療出前講座を各地で開催し、市民に対して在宅医療・認知症・病院医療に関する啓発につとめる。
4)いわき市広報誌に医学に関する記事の提供、休日当番医の情報を告知し市民に対する地域医療の普及啓発につとめる。
5)いわき市の市民講座を担当し、市民の健康教育に協力する。また、福島県医師会と連動し市民の健康寿命延伸のため、全国に先駆け当市で始まった受動喫煙防止のためのイエローグリーンキャンペーンを通年で継続するとともに、喫煙率の高い当市において世界禁煙デーに関連する市民啓発イベント開催や小中学校における禁煙教育などを充実させる。
6)マスコミとの意見の交換を随時行い、保健・医療・福祉における医師会活動の正しい認識をさせるべく情報活動を行う。
9.附属准看護師学校運営の充実
1)学校内外の整備に努めるとともにカリキュラムの充実をはかる。
2)准看護師進学過程コース併設の課題について検討し早期実現に取り組む。
令和6年度ブロック長
ブロック | 病院 |
---|---|
平ブロック | 園部清隆(本町通りクリニック) |
内郷ブロック | 常盤峻士(いわき泌尿器科) |
常磐ブロック | 川尻知佳(むらまつ小児科) |
小名浜ブロック | 小林豊茂(小林眼科医院) |
勿来ブロック | 斎藤幾重(さいとう内科クリニック) |
四倉ブロック | 大和田雅美(菅波医院) |
歴代医師会長
期間 | 歴代医師会長 |
---|---|
初代(昭和46年4月1日~昭和49年3月31日) | 竹林 貞吉 |
2代(昭和49年4月1日~昭和57年2月2日) | 石井 正 |
3代(昭和57年4月1日~昭和63年3月31日) | 吉田 仁 |
4代(昭和63年4月1日~平成10年3月31日) | 酒井 睦雄 |
5代(平成10年4月1日~平成14年3月31日) | 松崎 廣近 |
6代(平成14年4月1日~平成19年6月30日) | 石井 正三 |
7代(平成19年7月1日~平成24年3月31日) | 木田 光一 |
8代(平成24年4月1日~平成30年6月16日) | 長谷川 徳男 |
9代(平成30年6月17日~令和6年6月14日) | 木村 守和 |
10代(令和6年6月15日~ | 齊藤 道也 |